次世代電波観測装置に関する学会発表において、本センター職員が奨励賞をダブル受賞

先端技術センターの増井翔プロジェクト研究員(発表当時、同センター特別共同利用研究員および大阪府立大学 博士後期課程3年)が、第84回応用物理学会秋季学術講演会にて講演奨励賞を、2023年電子情報通信学会ソサイエティ大会にてエレクトロニクスソサイエティ学生奨励賞を受賞しました。「講演奨励賞」は、応用物理学会が開催する春秋講演会において応用物理学の発展に貢献しうる優秀な一般講演論文を発表した若手会員に対して送られる賞で、「エレクトロニクスソサエティ学生奨励賞」は、電子情報通信学会が開催する大会においてエレクトロニクス分野に関する優秀な発表を行った学生に対して贈られる賞です。

【応用物理学会 講演奨励賞】

今回の受賞は、増井研究員が3月の春季学術講演会で発表した内容が評価されたもので、将来の広視野受信機に必要なマイクロ波アイソレータの超小型化に向けた原理確認実験について発表しました。アイソレータは信号の向きを制御する部品の一つで、信号の逆流などを防ぎます。現在広く使われているアイソレータには磁性体と磁石が使用されており、センチメートルオーダ(典型的には3cm x 3cm x 1cmくらい)より小型化することが困難です。その問題を解決する方法として、増井研究員が参加するチームでは周波数変換器と位相遅延回路を用いた新原理のアイソレータを提案しています。この新原理を実証するために、市販のコンポーネントや超伝導周波数変換器を用いた原理確認実験を行い、アイソレータとしての動作を確認することができました。本原理のアイソレータは電波天文学だけでなく、量子コンピュータへの応用も期待でき、今後の小型化にむけた開発が期待されています。
今回の成果は、国立天文台先端技術センター内に設置された「社会実装プログラム」によるものであり、天文学のために研究開発された技術を天文学以外の分野へ実装することを今後も目指していきます。

関連リンク

先端技術センター:超小型マイクロ波アイソレータを可能にする新原理の実証に世界で初めて成功―大規模量子コンピュータや多素子電波カメラへの応用に期待―

【電子情報通信学会 エレクトロニクスソサイエティ学生奨励賞】

今回の受賞は、増井研究員が3月の総合大会で発表した内容が評価されたもので、ミリ波受信機で使用される導波管回路の通過損失等を極低温下(約4ケルビン)で高精度に測定した結果について発表しました。導波管回路の特性が受信機の性能に与える影響は大きく、特に広帯域な受信機になるほど、その影響が大きいことが考えられていました。そのため冷却下での導波管回路の特性を理解することは重要でしたが、熱の侵入を防ぐケーブルなどの付属物の影響により正確に測定された例が多くありませんでした。増井研究員が参加するチームは、測定系の再現性の向上や2面キャリブレーションを用いた多重反射の影響の低減により、導波管型直交偏波分離器の通過損失等を高精度測定することに成功しました。実際に使用する温度での周波数特性が高精度に得られたことは、受信機のさらなる高性能化や課題抽出に対して重要な意味を持ち、今後の受信機開発への応用が期待できます。

  • 受賞日:2023-9-12
  • 学会名:電子情報通信学会 エレクトロニクスソサイエティ
        エレクトロニクスソサイエティ学生奨励賞(受賞者一覧)

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ALMA:アルマ望遠鏡の開発に関する学会発表において、エレクトロニクスソサイエティ学生奨励賞を受賞