本センター特別共同利用研究員が宇電懇シンポジウム最優秀発表賞を受賞

先端技術センターの丹羽綾子特別共同利用研究員(発表当時 筑波大学博士後期課程2年)が、2024年3月に行われた宇電懇シンポジウムのポスター発表において最優秀発表賞を受賞しました。丹羽さんは筑波大学の宇宙観測研究室に所属し、先端技術センターで研究を行っています。

2024年3月3-4日に開催された宇電懇シンポジウムでは、若手による優れた研究発表の表彰が行われました。この賞は学生及び若手研究者に対する研究の奨励の一環として設けられたものです。

丹羽さんは今回、所属する筑波大学宇宙観測研究室の久野成夫教授が中心となって進める南極30cm望遠鏡(2024年度に現地作業開始)に搭載するために開発中の「1.5THz帯SIS光子検出器」について発表しました。この検出器は、先端技術センターのテラヘルツ実験グループ(松尾宏准教授)が提案するテラヘルツ強度干渉計に使うもので、応答速度を高めて天体起源の速い強度ゆらぎを測定し、遅延時間の情報をもとに画像合成を行います。検出器の製作は同センターのSISクリーンルームにて行われています。
現在、同センターの実験室では、0.8K冷却用の吸着冷凍器や、極低温回路の開発が進んでおり、画像合成の実証に向けて装置の組上げと評価が行われています。成功すれば、南極30cm望遠鏡2基によるテラヘルツ強度干渉計の試験観測にて、1.5 THz光子検出器を使ったNII輝線やダスト放射などの観測を行うことが検討されています。

受賞者インタビュー

受賞の喜び
博士課程残り1年となった節目の時期での受賞でしたので、教員、研究員の皆様や仲間達から応援してもらっているようで、とても嬉しかったのと同時に有難かったです。

研究課題への興味と研究参加へのきっかけ
もともと天文とカメラが好きで天体の写真を撮っていました。カメラの光を電気信号に変える仕組みが面白いと興味を持ち始めた時に参加した総合研究大学院大学サマースチューデントプログラムでの検出器(光を電気信号に変える)との偶然な出会いがありました。その2年後の総研大説明会で新しく作成された検出器を実際に見て、自分でも検出器の開発をしてみたいと研究への道を歩むことになりました。

筑波大学と国立天文台との2つの機関で研究をするという事は
研究と学びが出来る環境が2倍となり、広い環境からの視野、助言、身近で関わる事の出来る教員、研究員の数など両方の機関の良いとこ取りで、たくさんの可能性から自分の研究開発にアプローチが出来ます。

指導教員の松尾さんからのアドバイスについて
まずは装置の確認です。基本に立ち戻り、装置のあらゆる機能が正しく繋がっているか、正しく動いているか、ひとつずつ全て確認することを念押しされます。何故できないと悩む前に、トラブルはどこからきているのかを先に確認をすることにより、最短で解決策にたどり着け、先に進める事が出来ると、日々装置と向き合い開発をしています。

研究をしつづけるには
最終目的として南極の観測につなげたいので、やるしかない!の気持ちで進んでます。今回の発表は1年間トラブル対応をしながらの検出器の開発で苦しい部分もありましたが、ようやく性能評価も可能になり、研究が加速され膨大な結果を得ることができます。いつも結果の先に南極を見据えているので、将来的に検出器の規模の拡大、望遠鏡の搭載、そして開発した検出器でのNII輝線やダスト放射の観測が出来る事を念頭に置いて、次の研究につなげてます。

これから研究へ進まれる学生の方、そして松尾研究室を希望される方へ
私は特別共同利用研究員として国立天文台での研究の機会を頂き、最先端の研究に関われる機会に恵まれました。興味があれば私がカメラを使った天体写真撮影に興味を持ち、行き着いたのが検出器の研究開発であった様に、ぜひ自分の内にある探求心を追い求めて頂きたいと思います。松尾研究室でも研究員を募集しているので、一緒に研究し南極へつなげませんか。

  • 受賞者:丹羽 綾子
  • 賞・表彰の名称:最優秀発表賞
  • 受賞日:2024-3-5
  • 研究テーマ:南極テラヘルツ強度干渉計に向けた1.5 THz光子検出器の開発

関連リンク
宇電懇ニュース No.123